丹沢大山地域における現状と問題
外来種の要因連関図
明治以来、人間活動に伴って多くの外来種が日本に持ち込まれました。住民や観光客が意識しないまま(非意図的)持ち込まれたものもありますが、栽培植物やペットのように人間が意図的に導入したものが野生化したものもあります。外来種は都市部を中心に問題を起こしてきましたが、その分布は拡大して徐々に丹沢大山全域に広がりつつあります。外来種が丹沢山地に侵入すると、希少性の高い動植物や生態系が大きな影響を受ける可能性があります。
主な外来植物
オニウシノケグサ / オミナエシ / コヌカグサ / シュロ / セイヨウタンポポ / タチイヌノフグリ / ダンドボロギク / ナガハグサ / ハリエンジュ / ハルジオン / ヒメジョオン
/ ヒメムカシヨモギ / ベニバナボロギク / メマツヨイグサ / メリケンカルカヤ
主な外来動物
オオクチバス / コクチバス / ブルーギル / ソウシチョウ / ガビチョウ / カナダガン
緑化植物と砂防・治山施設
ウラジロチチコグサは10年前には横浜の市街地を中心に採集されていましたが、今では県内の高標高地を除く大部分に分布を拡大しています。丹沢山地でも玄倉川の上流のユーシンで発見されるなど、林道沿いにしだいに奥地まで侵入し始めています。
また、砂防・治山施設の周辺では、法面の緑化に外来の緑化植物を利用してきました。そのために、これら工事由来の外来植物の分布拡大が懸念されています。これ以上、人為的に外来植物を拡大させないように、早急な対策を検討する必要があります。
外来種 : 鳥類
今回の調査では、ガビチョウ、ソウシチョウ、カナダガンの3種について生息状況調査を行いました。ガビチョウは丹沢山地のほぼ全域で観察されました。ソウシチョウはシカの影響が少なく、林床にスズダケが繁茂している西丹沢の稜線部を中心に生息が確認されました。そのため、日本在来のクロジやウグイスなど、藪を好む鳥類との生息空間を巡る競合が懸念されます。カナダガンは丹沢湖に生息し、まだ数羽と個体数は少ないのですが、2005年には繁殖が確認されました。
外来種: 魚類・貝類
丹沢大山では、オオクチバス、コクチバス、ブルーギルが確認されています。特に流れのある河川でも生息できるコクチバスは丹沢山地の渓流環境の生きものにとって非常に危険な外来種です。古くから放流されているニジマスや、渓流釣りの対象となるイワナやアマゴは丹沢大山以外の地域から持ち込まれた、いわゆる国内移動由来による外来種です。また、サカマキガイやタイワンシジミなどの外来性の貝類の拡散など、渓流環境における外来種は大きな問題となっています。