丹沢の保全・再生に向けて
丹沢の保全・再生を支えるe-Tanzawa
これまで見てきたように、たくさんの要因が複雑に絡み合った結果が現在の丹沢の姿です。ですから、丹沢を再生し保全していくためには、さまざまな角度から情報を集めると同時に、個別の現象の関連性を把握することが大切です。
また、丹沢は、登山者や観光客が多く、農林地も含んでいます。このような関係者が多い地域で自然環境の保全や管理をするためには、お互いのパートナーシップが必要です。住民、NPO、行政、農林業者、研究者などが十分に意思疎通をし、智恵を出し合いながら協働して問題解決に臨まなくてはなりません。
そこで丹沢大山総合調査では、「自然環境情報ステーション・e-Tanzawa」を構築して、情報の共有をしていこうと考えています。「e-Tanzawa」の「e」は、「electronic(電子)」、「environment(環境)」、そして 「ecology(生態)」を意味します。県民や丹沢に関心のある方々に、インターネットを介して広く情報を発信しながら合意形成を図り、「いい(良い)」丹沢づくりに役立てていきます。

情報が丹沢を守る
自然環境の保全や再生、管理をしていくためには、正確な情報がなくてはなりません。たとえば、植生の分布は重要な情報ですが、丹沢のような広く急峻な山地を短期間にくまなく現地を踏査し調査するのは困難な作業です。そこで「リモートセンシング(衛星データ、空中写真)」の技術が威力を発揮します。衛星から送られてくる画像データを現地調査結果と重ねることで、広範囲の森林植生状態やその変化などの把握が可能になってきました。総合調査でも、リモートセンシングを自然環境のモニタリングや情報更新、現地調査の支援に活用していきます。
総合解析の進め方
丹沢を再生するには、“どこ”を“どのように”保全し管理すべきなのか、優先順位をつけて政策や事業を検討しなければなりません。それには、総合調査で収集した植生、森林管理、希少種、渓流などに関するさまざまな調査結果を分析し、具体的な政策や事業へと橋渡しする作業が必要です。このような総合解析には、このアトラス丹沢で描いたような各種の地図情報の上に、調査結果を重ね合わせ、情報相互の関係を分析するなどの多面的な検討を行います。この結果は、県民・行政・関係者が協働により森林衰退やシカ問題など重点課題を解決していく際の共有情報として活用していきます。国内外の先進事例も参考にしながら、“丹沢流”の自然再生に向けた新たな一歩を踏み出す準備が進んでいます。